「ねむれない!」…不眠症と睡眠衛生(2)

第2心療内科部長 星野 健

前回は、適度な睡眠時間のこと、不眠症とはどういうことかなどについてご説明しました。
今回は、より良い睡眠を得るために、どのような工夫をしていくとよいのか、睡眠衛生の面からご説明したいと思います。


1.就眠時刻と睡眠時間にこだわりすぎない。

毎日同じ時刻・時間睡眠をとれるわけではありません。
あまり決まった睡眠にとらわれると、「眠れない・・どうしよう!」と焦ってしまい、そのことで逆に眠れなくなるということは結構経験されることではないでしょうか。眠くなったら寝るぐらいの気持ちでいてください。


2.規則正しい起床と起床直後の日光暴露(日光を浴びる)

これは、(1)と矛盾しているようですが、起床時間はできるだけ一定にしてください。
人間は、起床して眼に太陽の光が入ると、身体に備わった体内時計がリセットされ一日の時計が動き出し、そこから約15〜16時間後に眠気を催してくるというリズムをもって生活しています。
したがって、起きる時間を一定にして起床後すぐに日光を浴びることで、眠る時間も一定になり、睡眠のリズムが出来てくるのです。


3.午後から夕方の適度な運動

昼間の運動が、睡眠を安定させ睡眠の質も改善し、不眠になりにくくすることが研究で明らかになっています。
30分程度の軽く汗ばむ程度の運動を毎日規則正しく行うことが良いとされています。ただし、夜間の激しい運動は逆に体温を上昇させ、交感神経を興奮させるため、睡眠にとっては逆効果になりますので注意してください。


4.適切な睡眠環境の維持

睡眠環境では、温度・湿度・照度・騒音などが重要です。

【温度・湿度】
温度(室温)・湿度は、寝具なしで眠るときは、室温29度、湿度50〜75%で最も安定した睡眠が得られます。
夏に寝具を使って眠る場合には、室温26度、湿度50〜60%が望ましく、28度を超えると睡眠の質が低下します。
冬は、寝具をきちんと使えば、室温が3度以上なら睡眠に影響がない、という報告もありますが、睡眠感が良いのは16〜19度、湿度50〜60%です。

【寝床内気候】
また、人の体と寝具の間の環境を、「 寝床内気候 」 といいます。
この寝床内気候が、温度32〜34度、湿度45〜55%のときに、最もよく眠れます。
この温度・湿度を保つために、季節に合わせて掛け布団などを調節しましょう。

【騒音】
安眠を妨げない騒音のレベルとしては、30デシベル(静かな散歩道で木の葉が風にゆれる音程度)以内とされています。
40デシベルを超えると、睡眠に悪影響が表れます。
つまり寝室は、図書館並みの静けさが必要ということです。
また、部屋の外から大きな音がする場合には、カーテンを厚手のものにするなど騒音対策を工夫してください。

【明るさ】
明るさについては、眠る前に500ルクス以上の光、特に青白い光を浴びると、睡眠ホルモン(メラトニン)が減少するといわれています。
ですから眠る1〜2時間前からは、やや暗め白熱灯のもとで過ごすと寝つきが良くなります。
睡眠中の照明は、一般的には暗いほど良いですが、真っ暗だと不安な人や、トイレに起きた時の転倒が心配な時は、白熱灯の豆電球を点けておくと良いでしょう。


5.寝室をねむる場所として以外に使わない

これは可能であればということになります。
居住環境の事情によっては、居間兼食堂兼寝室という場合もあるわけです。ただし、この場合でも、布団やベッドはできるだけ寝るときだけに使用し、布団やベッドに横になって本を読むとかテレビを見るとか(ついやりたくなってしまうのですが!)は避けて、寝具に横になる=睡眠という条件づけを自分の身体に学習させていくことが大事です。


6.睡眠を妨げる物質の摂取を避ける(カフェイン、アルコール、ニコチンなど)  

【カフェイン】
カフェインで眠れなくなるということはご存知の方も多いと思います。
カフェインには、覚醒作用(目を覚ます作用)があり、覚醒作用は数時間持続するといわれています。
カフェインが含まれているものとしては、コーヒーが有名ですが、それ以外に緑茶、紅茶、ココア、コーラ、チョコレートなどにも含まれています。
さらには、清涼飲料水や健康ビタミンドリンクなどにも含まれているものがありますので注意してください。
また、カフェインには覚醒作用と同時に利尿作用もありますので、尿意のために夜に起きやすくなることもあります。
覚醒と利尿の両作用とも不眠に結びつきやすいですので、カフェインの入った食品を摂るときには、摂る時間(夕食後少なくとも就寝前4時間以降は避ける)や摂取量などに注意が必要です。                 

【ニコチン】
ニコチンは強い興奮作用があり、覚醒効果はカフェインよりも強いといわれています。
たばこを吸った直後(ニコチン吸収直後)にはリラックス効果があってもその後は急激に覚醒効果が出現して眠れなくなります。
少なくとも眠る1時間前までには喫煙を止める必要があります。
まして、お酒とたばこを一緒に・・・なんてことをすれば、アルコールとたばこのダブル覚醒効果+アルコールの利尿効果で大変なことになりますので、くれぐれも注意ください。

【アルコール】
何といっても「寝酒」という言葉があるぐらい、「お酒を飲めばよく眠れる!」という認識は、かなりの方が持っているのではないでしょうか?
「睡眠薬なんて飲んでないで酒でも飲んでパーっと寝ちゃえよ〜」などと(余計な?)アドバイスをくれる方も身近にいたりしませんか?
確かにアルコールには睡眠導入効果(眠くなる)はありますが、睡眠時間の後半部分には覚醒効果が出てきて、途中で起きてしまうことが多くなります(結局浅い眠りとなってしまいます)。
また利尿効果もありますから、トイレに行きたくなって途中で何回も起きることになります。
またアルコールは、耐性ができやすいといわれています(慣れて効果がなくなりやすい)。眠るためにお酒を飲んでいると、同じ量のお酒ではだんだん眠れなくなってきて、次第にお酒の量が増えてきて、その結果肝臓障害を生じたり、アルコール依存になってしまう可能性もあります。
適度のお酒は食欲増進やリラクゼーションなど良い効果もあります。
しかし眠る手段としてお酒を利用するのは控えた方が良いと思います。      


7.リラクゼーション  

眠るときには、心身をリラックスさせて眠りたいものです。
そのためには、日中に心身を緊張させていた原因(仕事・家事・勉強など)から離れて、気分転換をうまく行い、できるだけ日中の緊張状態から解放されて眠りに着きたいものです。
そのためには、自分なりのリラックス方法をいくつか決めておくこともよいと思います。

@ ぬるめのお風呂に入浴する(注意:熱いお風呂に入って体温を上げると逆に身体が興奮状態になり眠れないといわれています。)

A 前述しましたように、夜間の激しい運動は睡眠には逆効果ですが、適度な運動は、睡眠には良い効果があります。体温が上昇しない程度の軽めの運動もよいでしょう。

B 心地よい香りも、睡眠には良いといわれています。アロマテラピーなども最近は盛んですので、利用してみるのもよいと思います。(ラベンダーなどがよく使われるようです)

C 同じように心地の良い音楽を聴くことも、心のリラックスには良いといわれています。適度な音量で、気持ちが落ち着くような音楽を利用してみるのもよいと思います。

そのほか、自分が心身のリラックス、気分転換ができる様な自分なりの方法を見つけることをお勧めします。


8.昼寝のコツ

昼寝をする習慣の方も結構いらっしゃるかと思います。
昼寝をする場合には、ちょっとした注意が必要です。
それは「昼寝は30分以内、午後の3時より前に」ということです。
日中の心身の疲れをちょっと取るという意味では、昼寝もよい習慣だと思います。
しかし、30分以上昼寝をすると、脳の働きが停止してしまい、眼が覚めてもボーッとしたり、夜の睡眠時間にも影響があると言われます。
同じように午後3時以降の昼寝も夜の睡眠時間に影響を与えます。
「昼寝をするなら、3時前に30分以内で」を心がけてください。         


9.基礎正しい食生活(食事時間) 
           
特に規則正しく朝食をしっかりとることは、朝食をとったことで消化管の働きが目覚めて、脳も含めた身体全体の規則正しい目覚めにつながります。
逆に夕食が遅いと、睡眠に影響を与えますので、寝る3時間以上前には夕食を済ませるようにしましょう。
 

以上、自分で出来る、よい睡眠への工夫をお示ししました。
しかし、不眠の原因が心身の疾患による場合もあります(うつ病や不安障害、睡眠時無呼吸症候群など)。
不眠でお困りの節は、心療内科や精神科、睡眠科などにご相談ください。


参考文献                        
1)『睡眠障害の対応と治療ガイドライン 第2版』         
 (睡眠障害の診断と治療ガイドライン研究会,内山 真/編).じほう,2012

2)『内科医のための不眠診療』                
 (小川 朝生,谷口 充孝 編).羊土社,2013

3)「睡眠障害診断のあり方」内科,111:193-396,2013



このページの先頭へ