「ねむれない!」…不眠症と睡眠衛生

第2心療内科部長 星野 健

心療内科の外来を受診する患者さんは、かなりの割合で不眠を訴えられます。
「床に入ってもなかなか眠りに就けないんです。」
「せっかく眠っても、途中で何回も目が覚めるんです。」
「さっぱり寝たような気がしないんです。」
などなど・・・
私もつい、「それは不眠症ですね」などと言ってしまうこともあるのですが・・・
でも、不眠症とはどういうことなのでしょう?反対に正常な睡眠とはどんな睡眠なのでしょう?

いろいろ調べてみましたが、正常な睡眠時間の定義は、はっきりしませんでした。ただし、どのくらいの睡眠時間が適当かといういくつかの調査がありました。
つい数年前までは8時間睡眠が適当・標準と思われていました。しかし、最近のアメリカでの大規模研究では、7時間睡眠の人の平均寿命が一番長いという結果が示されています。また、日本人での調査では、睡眠時間が5時間以上8時間未満の人が全体の86.3%を占めており、平均睡眠時間6.5時間という結果が示されています。
さらに、睡眠の満足度では、6〜7時間の睡眠時間の人の満足度が最も高いという結果が出ています。逆に5〜6時間の人では、満足していない人の割合が一番多いという結果でした。
つまり、日本人の場合は、6〜7時間の睡眠時間が合っているということになるのかもしれません。(ただし、あとからも述べますが、適度な睡眠時間には個人差がかなりあります。)

では、不眠症とはどのような状態をいうのでしょうか?
睡眠学会では不眠症の定義を次のように定めています。

@夜間なかなか入眠出来ず、寝つくのに普段より2時間以上かかる入眠障害、一旦寝ついても夜中に目が醒め易く2回以上目が醒める中間覚醒、朝起きたときにぐっすり眠った感じの得られない熟眠障害、朝普段よりも2時間以上早く目が醒めてしまう早朝覚醒などの訴えのどれかがあること。

Aこの様な不眠の訴えがしばしば見られ(週2回以上)、かつ少なくとも1ヵ月間は持続すること。

B不眠のため自らが苦痛を感じるか、社会生活または職業的機能が妨げられること。

つまり、本人が苦痛に感じたり、社会生活や職業上の不都合を生じなければ、不眠症とはならないということです


では、この様な不眠の訴えは、どの程度の人が、自覚し訴えるのでしょうか?
日本の一般人を対象として行われた疫学調査によれば、成人の21.4%が不眠を訴えているという結果が出ています。 さらに、成人の14.9%が日中の眠気に悩み、6.3%が寝酒あるいは睡眠薬を常用していることが明らかにされています。
さらに平成19年に厚生労働省が行った調査でも、国民の5人に1人が「睡眠で休養が取れていない」「何らかの不眠がある」と回答しています。

不眠症は、小児期や青年期には稀であり、20〜30歳代に始まり、中年以降で急激に増加し、40〜50歳代でピークを示します。 この背景には、人口の高齢化、ライフスタイルの多様化、生活リズムの乱れ、ストレスなどが関連していると考えられています。

この様に、多くの人が、何らかの不眠を訴えています。心療内科の外来を受診される不眠症の方に対しては、面接をして不眠の原因を探るとともに、薬物療法(睡眠薬など)を行うことが多いです。

しかし、お薬を使う前に、各人が睡眠についての正しい知識を理解してもらい、様々な工夫をしていただくことで、それぞれより良い睡眠を得ていただく、これが睡眠衛生と言われるものです。
睡眠衛生の面から、どのような点に注意・工夫をして頂けばよりよい睡眠を得ることができるのかを、次回ご説明したいと思います。

(3月号へ続く)



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