乳がん基礎知識(4)

日本乳癌学会乳腺専門医 外科 多田 隆士

乳癌の発症には家系内に発症のみられない散発性乳癌(非家族性乳癌)と家系内に乳癌が集積してみられる家族性乳癌に分類されます。
乳癌のほとんどは散発性乳癌として発症しますが一部が家族性乳癌として発症し、欧米では全乳癌の5〜15%の頻度と言われています。
また家族性乳癌の発症に幾つかの特徴もあり、今回、家族性乳癌の定義、その特徴についてお話します。

家族性乳癌とは
家族性乳癌とは発端者(ある疾患で家系調査のきっかけになった罹患者)からみて家系の第一度近親者(親、兄弟姉妹、子)内に乳癌が多発してみられる場合(図1、家系図)をいい、一般的には臨床的に表1のように定義されています。
日本の全国調査では0.1〜4.3%で平均1.1%の報告があり、欧米より家族性乳癌に頻度は低いと考えられています。家族性乳癌のうち遺伝子異常で発生する乳癌を次項で述べる遺伝性乳癌と言います。

家族性乳癌の原因
乳癌の発生には食生活、ホルモン環境などの環境的因子と遺伝的因子、その両者の相互関与で発生すると考えられています。
家系内に乳癌が集積する家族性乳癌は遺伝的関与が強く考えられ、家族性乳癌のうち単一の遺伝子形式によって発症がみられる場合を遺伝性乳癌と言われています。その原因遺伝子としてBRCA1、BRCA2などが発見されていますがBRCA1、BRCA2の異常によるものがほとんどで、欧米における遺伝性乳癌の70〜80%はBRCA1またはBRCA2の異常によるものと考えられています。

家族性乳癌の特徴
 乳癌の家族歴がある場合はその家系内に乳癌発症率が高くなります。欧米では乳癌発症が母ないし姉妹間でみられる場合の乳癌発症の危険度は1.8〜2.1倍、母と姉妹間の両者では5.6〜13.6倍であるという報告があります。
日本での多施設からの集計では乳癌の家族歴ある場合の乳癌発症は家族歴なしに比べ1.5倍という報告があります。
BRCA1、BRCA2遺伝子異常で発症する乳癌は40歳未満の若年発症、両側乳癌の発症がみられことあります。
またBRCA1は卵巣癌の発症に、BRCA2は男性乳癌の発症にも関与しているとも言われています。

家族歴からみた乳癌検診
上記した特徴から家系内に乳癌の発症のある場合は第一度近親者内に乳癌発症の危険度が高く、また若年性発症もみられることもありますので乳癌の早期発見、早期治療の面からも検診は受けるようにし、特に家系内に複数の乳癌の発症がみられる方は30歳以上から視触診だけでなくマンモグラフィまたは乳房超音波検査を併用した検診をおすすめします。



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